すごいぞ!日本のキーテク

ソニーが消費電力を35%抑え、音質にもこだわった薄型スピーカーを載せた製品展開を加速している。省エネを実現したのは「磁性流体」と呼ばれる磁力に反応する溶液。6月発売の高解像度技術「4K」対応の液晶テレビも搭載される。音にこわるソニーらしい製品を支える技術として注目されている。

「アナウンサーの声でさえ聞き取りにくいという人もいる。薄型のスピーカーをパネルの中に配置したことで、音をしっかり出せるようになった」

ソニーが4月中旬、東京都内で開いた液晶テレビ「ブラビア」の新製品発表会。フルハイビジョン(HD)の約4倍の解像度を示す「4K」に対応した大画面テレビを前に、テレビ事業の責任者である今村昌志業務執行役員は音へのこだわりをこう強調した。

4Kテレビは映像の美しさばかりに目が行きがちだが、6月発売の新モデルは「映像と一体化した迫力のある音を楽しめる」(同社)のが特徴だ。

一枚板ガラスのパネルには、画面を挟むように左右にスピーカーが3個ずつ縦に配置されている。一番下にあるのが磁性流体スピーカーで、テレビの背面を伝わって上部のスピーカーも同時にクリアな中低音を響かせる。

磁性流体とは、酸化鉄などの細かい磁性体粉末を含むオイル状の溶液。米航空宇宙局(NASA)が1960年代に宇宙服可動部のシール材などとして開発し、今ではさまざまな分野に応用されている。

ソニーは2011年、磁性流体スピーカーを独自開発。音楽データをスマートフォン(高機能携帯電話)に取り込み、無線LANでスピーカーに飛ばして音楽を聴くスタイルが主流になり、音響機器の小型・薄型化が一層求められるようになったのがきっかけだった。

従来のスピーカーは振動板とボイスコイルの間にダンパーと呼ばれる部品をはさみ、ボイスコイルの飛び出しを抑えていた。磁性流体スピーカーは磁石の溝に磁性流体を入れ、ダンパーがなくてもボイスコイルが安定した状態で効率的に音を出すことに成功した。ボイスコイルから振動板の伝達経路が短くなり、音がスピーディーに伝わるようになっただけでなく、ダンパーが出していた余分な音もなくなり、クリアな音を実現した。スピーカーの厚みは約3割スリム化。音を効率的に出せるようになったことで、消費電力は35%も減った。

薄型化が進むテレビの場合、スピーカーは背面や下向きにつくことが多く、音がこもってしまうのがネックだった。40型台までの画面サイズでは映像と音響のずれはそれほど気にならなかったが、4Kテレビの市場が立ち上がり、50型以上が増えてくると、映像に負けない音が求められるようになってくる。同社は磁性流体の力でスピーカーを薄型化し、前面にスピーカーを配置するデザインを可能した。

同社は1950年、世界で初めて磁気カセットテープを世に送り出した。その技術を用い、スピーカーに最も適した磁性流体を研究し、金属粉の配合や粒子の大きさを工夫した。担当者も「磁性流体スピーカーはソニーの歴史を踏まえた技術だ」と胸を張る。磁性流体スピーカーは今年発売の製品のうち、4Kテレビとコンポ、スピーカーなど計4モデルに搭載されており、製品展開にも広がりが出てきた

 

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